コージーなロマンス、コージーなミステリ

お気に入りのラノベやロマンス、ミステリなどの小説やコミックスについてレビューしています。

※ 当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

本好きの下剋上 第五部_女神の化身Ⅳ~Ⅵまで 香月 美夜/椎名 優 (貴族院図書館へディートリンデ来襲!時の図解あり)

この記事では、本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~の第五部 女神の化身Ⅳ~Ⅵ(4~6)について、巻ごとに紹介しています。


本好きの下剋上」は、巨大創作サイト「小説家になろう」で連載、完結済の作品です(リンククリックでWeb版のページへ)。

第五部は全12巻。だいたい第461話~677話(最終話)にあたります。

第五部はとても長いし内容が濃いので4つに分けました。この記事が2つ目になります。

1つ目の記事、第五部のⅠ~Ⅲはこちらです。

castleslove.hatenablog.com

書籍の内容を大別すると、

  • Ⅰ~Ⅲ:貴族院3年生編
  • Ⅳ~Ⅵ:エーレンフェスト+領主会議編
  • Ⅶ~Ⅸ:本物のディッター編
  • Ⅹ~Ⅻ:中央の戦いと就任式編(完結)

となっています。


なお、「本好きの下剋上」の概要については別記事で紹介しています。まず全体を把握されたいかたは、先にそちらをお読みください。

castleslove.hatenablog.com


第一部~第四部の紹介はこちら(コミカライズ版含む) ↓


第一部

第一部各巻のあらすじと感想

第二部

第二部各巻のあらすじと感想

第三部

第三部各巻のあらすじと感想

第四部

第四部1~5巻のあらすじと感想

第四部6~9巻のあらすじと感想


残念ですが、第五部のコミカライズはまだ始まっていません。

もう少し第四部が進んでからにするためか、それとも第二部の鈴華先生の連載が終わるのを待っているのか…

ファンとしては早く始まってほしいです! お願い!


(広告)


  • 一部ネタバレあり。
  • あらすじは筆者が作成したものです。
  • 感想はあくまで筆者の個人的な印象に基づいています。
  • 資料は筆者が作成したものです。



(広告)


第五部 聖女編 エーレンフェストの聖女→女神の化身?へ


第四部の最後、後見人で家族同然のフェルディナンドを失ったローゼマイン。

下町の家族を失い、貴重な2年間を眠って過ごし、起きてからは下町のみんなとのふれあいをも失った彼女が、最後の心の拠り所を失いました。

それは迂闊で暴走しがちなローゼマインの貴重なストッパーであり、虚弱な彼女の身体をいつも気遣ってくれる主治医であった存在を失うことでもありました。

ローゼマインは、エーレンフェストは大丈夫なのでしょうか。

そして敵地へ行ったフェルディナンドの運命は?


第五部Ⅲまでのおさらい


第四部で、王命によりアーレンスバッハへ婿入りさせられたフェルディナンド。

ディートリンデが貴族院にいるうちは執務に集中できましたが、

今は人の話を聞かないうえ執務を厭う「世界で一番お姫様」な婚約者が領地に戻ってきたため、心労の絶えない日々を送っているでしょう。

一方エーレンフェストでは、マティアスとラウレンツがもたらした情報により、

貴族院が始まってまもなく、旧ヴェローニカ派の粛清が行われました。

親が処刑されたことから、5人の学生が領主一族に名捧げして命を永らえることになりました。


もやもやするものを抱えたまま、なんとか前を向いて学生達を率いて行こうとする領主候補生3人。

今年も座学は順調に進みましたが、御加護を得る儀式でいくつもの問題が発生してしまい大騒ぎに。

  • 加護が多すぎて祝福テロやピカピカ奉納舞が発生する
  • ダンケルフェルガーと共同研究を行うことになる
  • ダンケルフェルガーの儀式を真似たら呪いになる
  • 王族を招き貴族院で大規模な奉納式を行う

などなど、のちのちの重要な伏線となる出来事が満載でした。


さらに奉納式の後のお茶会で、ヴィルフリートはレスティラウトに言いがかりをつけられて、嫁取りディッターに持ち込まれます。

エーレンフェストが勝利しましたが、途中で中央騎士団や他領からの乱入があり、不本意な勝負となりました。

このディッター、ディッターを神聖視するダンケルフェルガーには大問題。

実は領地に虚偽の報告をしていたレスティラウト。さらに自ら陣を出たハンネローレ。

二人に瑕疵をつける結果になり、ずっと引きずることになります。


領地対抗戦では、ダンケルフェルガーとエーレンフェストの常識の違いに驚きを隠せません。

実はディッターの契約書などの決まり事はダンケルフェルガー特有のもので、他領には全く知られていないため無理もないことだったのですが…

取りあえずダンケルフェルガーやアナスタージウス王子に対して認識のすり合わせを行い、トルークの情報を伝え、アーレンスバッハの危険性もほのめかしました。


初めての表彰式に感動したし、領地対抗戦自体は大成功。

しかし卒業式ではよりによってディートリンデが、中央神殿に「次期ツェント候補」と宣言されてしまいます。

全くそんなことはないし有り得ないのですが、重要な情報、特に神事に関する情報が失伝している今のユルゲンシュミットでは、正しい判断ができないのです。

ますます傲慢さを増すディートリンデと情報操作をしまくるゲオルギーネ、そして王族にフェルディナンドに対する疑心を植え付けるため暗躍するラオブルート。

それぞれ異なる思惑を持って動く彼らに、エーレンフェストだけでなくユルゲンシュミットも振り回されることになります。


そしてエーレンフェスト内では、ヴィルフリートの周囲に残る旧ヴェローニカ派が主に甘言を吹き込む。

領主一族に悪意の種が撒かれていきます…


※第四部から書籍に、エーレンフェストだけでなくこの異世界「ユルゲンシュミット」の地図がつきました!

神様が協力して何もないところに創られた国なのでキレイな円形。

でも貴族院はこの陸地の一部ではなくて、転移陣でしか行くことができない場所にあるそうですよ。

第五部は地図を見た方が理解しやすいと思いますので、領地名やギーベの土地の名前が出たら場所をチェックしてみてください。

領地の特性については、ふぁんぶっく3 に情報があります。(紙書籍はTOブックスオンラインストアのみ)



第五部 女神の化身Ⅳ(4)(通算第25巻)



神様やお貴族様の長い名前も耳からなら覚えやすい! オーディオブックは2025/4/4配信予定。
Audible でどうぞ!

[25巻] 本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身4」 香月 美夜 (著), 井口 裕香 (ナレーション), Audible Studios (出版社)


Audibleについてはこちらの記事で紹介しています。

castleslove.hatenablog.com



第五部Ⅳの表紙は、暗い表情でバラバラの方向を見る領主一族。

反抗的な表情のヴィルフリート。

ローゼマインの平民的神殿的思考のおかげでうまくまとまっていた彼らに、いったい何が起きるのでしょうか。

口絵はキルンベルガの国境門。ギーベ・キルンベルガがイケオジです。

でもなぜか、行っていないはずのダームエルとアンゲリカがいます。このときの護衛ってコルネリウスとレオノーレだったはずなのですが…

まあそれは良いとして、昔のツェントが造った国境門、美しいですね。



あらすじ


プロローグはランプレヒト視点。

領主候補生の側近とはいえいまいち頼りない彼の視点が入ると、ヴィルフリートの周囲の考え方が明確になる。

常に危機感を抱き全体を見なくてはならない、ローゼマイン周辺の考え方に慣れていた読者はその甘さに驚愕(少なくとも私はそうでした)。

ローゼマイン周辺の事情をまったく知らなかった(調べもしていなかった)ランプレヒトは、両親にそれぞれ厳しくたしなめられて反省する。

しかし彼がどこまで悪意と反感に染まりつつある周囲に影響を及ぼせるのか…


いろいろあった貴族院から帰ってきたローゼマインだが、どうやら領内はまだまだ落ち着いていないようだ。

しかも領主一族の会議は、ローゼマインたちにとって衝撃的なものとなった。

なんとジルヴェスターに「これ以上頑張らないでほしい」と言われてしまったのだ!

理由はライゼガング系貴族が「順位を上げても喜ぶ者は誰もいない」と考えているから。

どうやらローゼマインが目立ち過ぎ、アウブを目指しているように見えることが良くないらしい。

モチベーションが急激に下がる。わたし、いない方がいいってこと?


そんなことを言われて誰かや何かを支える気になれるはずがない。

それなのになぜかヴィルフリートは張り切っている。わけがわからない。

神殿に引きこもろうと決意すると、領主夫妻に「社交の手伝いをしてくれ」と頼まれる。

シャルロッテがとりなしてくれたもののモヤモヤしたまま会議室を出るが、どうやら裏がありそうだと気付く。


ヴィルフリートもジルヴェスターも、ライゼガングに逆らえない状態にされているのではないか。

もしかすると、ヴィルフリートは騙されているかもしれない。

側近達と話し合い情報をさらに仕入れた結果、保守的な層と変化を歓迎する層に分けることを提案することに。

しかしシャルロッテにはまだ弱いと言われる。たぶん第二夫人をライゼガングから迎えることが一番だと。

さまざまな意見を携え、ローゼマインはジルヴェスターに面会を申し込む。

ボニファティウスも含めた話し合いで、ローゼマインはライゼガングを抑える提案をするが、さらに良い案がなんと彼女の側近から提示される。

微調整は必要だろうが、子供達にライゼガングへの対処を押しつけずジルヴェスターに責任を持たせる結果となり、なんとかうまく収まることとなった。

そして粛清により側近が不足して困っている領主夫妻のために、リヒャルダがジルヴェスターの側仕えに復帰する。


神殿も大きく変わりつつあり非常に忙しい。

メルヒオールが次期神殿長に決まり、ローゼマインが粛清で親を失った子供達を孤児院に引き取ったからだ。

さらに今度は洗礼式が終わっている子供達も、青色神官見習いとして受け入れることになった。

現神官長ハルトムートが優秀なのでなんとか回っているが、フェルディナンドが抜けた穴は大きい。

そんなことを考えながらマイ図書館へ行って、ローゼマインはやっとフェルディナンドの褒め言葉を聞くことができ、慰めを得る。


また、神殿では御加護の再取得が行われた。ミュリエラはエルヴィーラに名捧げを変更。

ローゼマインはボニファティウスの神殿への忌避感をなんとか補正できないか必死だ。

御加護の再取得で実質魔力が増えることを印象付け、絶対数の多いこの年代が神殿に来られるようにしたいのだ。


クラリッサが来襲したり、ヴィルフリートが反抗期という話があったりしたが、みんなの協力でなんとか自分担当の祈念式がほぼ終了。

ローゼマインは最後の祈念式で、グーテンベルクを連れてキルンベルガへ向かうこととなった。

そこで国境門を初めて目にして、エーレンフェストの成り立ちの真実を聞かされる。

エーレンフェスト周辺はもともと国境門を抱える大領地アイゼンライヒであり、キルンベルガは他国の商人で賑わう土地だった。

しかし200年以上前、他国にそそのかされ反逆の地となったため、ツェントによって国境門が閉ざされ重い処罰を受けた。

分断され主要産業を失った領地。貴族達は不満を抱えまとまらず。

新アウブは自分の力不足に絶望し、ツェントに地位返上を願い出る。

それを受けて傍系王族がアウブに任命され、ツェントが礎の場所と領地名を改め、エーレンフェストという中領地が生まれたのだという。

だが国境門は、処罰を受けて以来閉ざされたままなのだ。


今のツェントはグルトリスハイトを持たない。

そのため同じような反逆があっても国境門の開閉はおろか、領地の境界線を引き直すこともできない。

それはつまり、的確な処罰をすることができないということでもである。

グルトリスハイトの重要性に思い至り、ローゼマインは衝撃を受けるのだが…



書き下ろしSSなど


()内は大まかな内容。

特典SSとは、TOブックスオンラインストアや本好き応援書店で紙書籍を購入すると付いてくる書き下ろし短編です。

「Web版」と書かれていないものは書籍化にあたっての書き下ろしです。

  • プロローグ:ランプレヒト視点
    (ヴィルフリート様達は大丈夫だ)
  • エピローグ:アレクシス視点
    (ヴィルフリート様はすっかり変わられた)
  • 短編1:「反省と羨望」
    シャルロッテ視点(わたくしのせいでブリュンヒルデが)
  • 短編2:「西門での攻防」
    ギュンター視点(大変だ!許可証を持たない他領の貴族が!)
  • 特典SS:「婚約の事情」
    トゥーリ視点(やっぱりこうなるよね。でも安心できる)(短編集Ⅱ収録)
  • 小ネタ:「第二夫人決定後の会話」
    twitterに投下された後、先生が活動報告にもコピペしてくださいました。

ハルトムートを扱い慣れているブリュンヒルデの手腕が楽しい。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/372556/blogkey/2812512/

  • SS置き場第29話短編集Ⅱ収録)
    ローゼマインが心配している陰でこんな会話がありました。

ルッツ視点:「トゥーリの心配」(ラルフが成人式なんだよね)


目次へ


感想(ネタバレあり)


プロローグのランプレヒト視点。すっかり旧ヴェローニカ派思考に染まって、圧倒的小物感がありますね。

登場当初は子供で末っ子感があったコルネリウスが護衛騎士としてかなり成長したのに比べると、とても残念。

主の廃嫡の危機など努力すべき場面はあったと思うのだけど、次期領主と決定した途端、危機感も警戒心もポイして情報を得るために奔走することを放棄。

次期領主の地位がローゼマインとの婚約によるものであるという、結構危ういものであるという事実に気付いていないってどういうことだろう。

ローゼマインが王族か他領に取られるという可能性は、他領ではとっくに気付いているのにね。

「ライゼガングはローゼマインにまとめてもらえばいい」とか、「母親に隠れてコルネリウスとローゼマインに協力してもらう」とか考えてるし…。

主を高めるために自分達が必死に努力するのではなく、情報も碌に得ずに他力本願なことを考えているあたり側近として終わってるんじゃ?

それって領内の派閥争いや次期領主争いでは通用しても、主の能力が上がるわけじゃないので、他領への影響力は上がらない。

つまり他領より秀でるという考えに思い至らない下位領地思考ってことだよね…エピローグのアレクシスといい、功績を譲るのが当然と言ったり旧ヴェローニカ派思考残念すぎる。

主に厳しい言葉をかけ続けることも側近の務めだろうに。頑張って二人とも。


旧ヴェローニカ派の考え方と言えば、シャルロッテ視点では何度か、成果を譲るようにヴィルフリートの側近に言われていたことが書かれていました。

しかしローゼマイン視点ではそんなことを言われたという描写は見当たりませんので、質問してくださった方がいたようです。

ふぁんぶっく7のQ&Aにある香月先生のお答えが傑作。


Q …(略)…ローゼマイン視点ではオズヴァルトからの動きは確認できません。城で暮らしてないため接触ができなかったからでしょうか?
A ローゼマイン自身は城にいないし、シャルロッテと違って遠回しな言い方では通用しないし、ライゼガング系の側近達は「ウチの主は素晴らしいけれど、ヴィルフリート様の実績だけでは不安になりますよね。次期領主に向いていないと次期領主を辞退すれば良いのでは?」と煽りまくって阻止しますから。そんなやり取りの積み重ねでお互いの側近の溝が更に深まりました。


ローゼマインの側近、小物の扱いに慣れ過ぎじゃない? 

なお、ふぁんぶっく7はこちらです。表紙がネタバレになるので画像はなしで。

本好きの下剋上ふぁんぶっく7 (TOブックスラノベ)


こちらは電子書籍です。紙書籍はTOブックスオンラインストア限定。

あとはイベントとか POP UP SHOP などで買えますよ! イベントについてはこちらで確認してみてください。

最新News|「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜」特設サイト


さて、自らの後ろ盾を切ってしまったアウブはライゼガングからの圧力に抗しきれず、これまでとは打って変わって、順位を下げる努力をするよう子供達に告げます。

有り得ないですよね! 読者も愕然!としますよ当然。

投げやりになった結果、ローゼマインは意図せずヴィルフリートに「祈念式の舞台の情報」という功績を譲ってあげちゃってるし。

シャルロッテも、時期を考慮せず母親を妊娠させたことについて父親に怒りを見せるし。

(領主一族ってこうでなくてはいけないんですね。フレーベルタークへ嫁いだお姉さんにも怒られましたものね)


でもライゼガングからの圧力だと察するあたり、さすが他者の反応をよく見ているローゼマイン。
自分のことについては鈍感なのがちょっと残念ですがまあそれはおいといて。

ローゼマインは側近達から情報を得て、状況を好転させるきっかけを作ります。

でも真に状況を読んでいたのはブリュンヒルデ。

うまく状況を利用したのも彼女で、見事なプレゼンで第二夫人となる約束を取り付けました。あっぱれですね!! 

さすが「突然王族が」とか「突然昏倒」とか「突然祝福テロ」、さらに「毒殺未遂!」など突発的な危機に慣れたローゼマインの側仕えです。

思考の切り替えが見事でした。


彼女の提案とともに、エーレンフェストの世代交代の波が明確になってきました。

メルヒオールが次期神殿長に決定。

孤児院の子供達も大きくなりました。

グーテンベルクは弟子を育て始めました。

いつまでも「現状」に留まってはいられない、と頭の固そうなギーベ・グレッシェルでさえエントヴィッケルンに向けて頑張っているようです。

うーん、ヴィルフリートの周囲が目立ってきちゃいましたね。


キルンベルガでは、重要な歴史が語られます。

エーレンフェストはもともと「アイゼンライヒ」という大領地の一部だった。

(このことは「ハルデンツェルの奇跡」でさらっと語られていますが)

反逆によって国境門が閉ざされ、さまざまなものを失い、領地名さえ変わって今に至るとのこと。

その際にハルデンツェルの儀式が本来の形を失ったのでしょう。

ライゼガングもそうですが、ハルデンツェルもキルンベルガも昔からある土地なんですよね。

そしてローゼマインはギーベ・キルンベルガに、アウブの素質十分と認められちゃいました。


ヴィルフリートの先行きがとても不安になる巻になってしまいました…

ギュンター視点の短編が最高の癒しですね。彼はブレないなあ。



(広告)




目次へ


第五部 女神の化身Ⅴ(5)(通算第26巻)



オーディオブックは2025/8/8配信予定。Audibleでどうぞ。


[26巻]本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身5」香月 美夜 (著), 井口 裕香 (ナレーション), Audible Studios (出版社)


表紙、表情は険しいけど色がきれい~ 春ですもんね。

ローゼマイン、背が伸びた? うん、外聞を考えなきゃならなくなってきたかな。

この巻は第五部の山場の一つ(山場が多い)。ローゼマインにとってもユルゲンシュミットにとっても大きな転機が訪れます。

王族としっかり関わってしまったローゼマインはどうなるのか。



あらすじ


ヴィルフリートの反抗的な態度に手を焼くボニファティウス。

ジルヴェスターにヴィルフリートを次期領主から下ろせと迫るが、甥は納得しない。

そしてローゼマインに悪い噂があるらしい。

かわいい孫娘のため、自分が憎まれ役を買って出ることにする。


御加護の再取得に来たボニファティウスから、名捧げの変容について注意を受けて落ち込むローゼマイン。

それに側近も注意不足だと。こういう所で成人側近の少なさによる弊害が出るのだろうか。

さらにジルヴェスターには、星結びの延期や銀の布のことでフェルディナンドの心配をしていたら、お互いに踏み込み過ぎだと言われる。

ローゼマインもフェルディナンド自身も、以前と同様家族のように心配し甘え合っているだけなのだが。

しかしそれは、成長してきたローゼマインとほかの女性と婚約しているフェルディナンドの間柄では、不適切なことらしい。

家族間の思いやりが平民ほど深くない貴族の間では、異性として意識しているように見えるということなのだろうか。


婚約者として扱ってもらったこともないヴィルフリートとの仲を深めるため婚約者として心配しろと言われ、当惑するローゼマイン。

もう後見人から外れたフェルディナンドとは、秘密のやり取りはもちろん、家族として思いやって連絡を取り合ってはいけないのだと。

それはローゼマインにとって、ずっと大事にしていたかった小さな心の支えが完全に失われることでもあった。


領主会議では、昔の石板を読み込んだらしいイマヌエルに古の儀式の復活を要求される。

シュタープ製の神具をまとって儀式を行ったところ、本来の儀式の形が蘇って大騒ぎに。

それを見たイマヌエルの執拗な中央神殿入り依頼に、ローゼマインの周囲は警戒を強める。


ヒルデブラントが魔力圧縮によって地下書庫に入れるようになっていた。

ローゼマインは「小さい子が頑張った」努力に感心する。

母親のマグダレーナも息子の努力を褒めるだけで、彼の真の動機には全く気づいていない。

星結びの儀式では、ジギスヴァルト夫妻の立つ舞台に魔法陣が浮かび上がったという。

どうやら王族にとってとても都合の良い結果になったようだ。


しかし楽しく作業をしているとディートリンデが図書館にやって来た。

何者かに地下書庫のことを知らされたらしい。慌てる地下書庫の訪問者達。

第二閉架書庫まで上がり隠れていると、「自分はグルトリスハイトを手に入れ、真のツェントになる」とのたまうディートリンデ。

「グルトリスハイトを持たない者を王族と呼ぶのはおかしい」とも。

不敬罪によるフェルディナンドの連座の可能性に、危機感を強めるローゼマイン。

「シュラートラウムの花」という言葉も聞こえるが意味がわからない。


ディートリンデを避けてみんなで外に出ると祠らしいものに行き当たる。

ローゼマインはなぜか一人だけその中に引きこまれ、求められるままに祈りを捧げると、ライデンシャフトから「青い石板」と「メスティオノーラの書を得るための言葉」を与えられる。

これってメスティオノーラの書=グルトリスハイトを得るためのキーワードなんじゃない?

わたしがグルトリスハイトを得て、喉から手が出るほど欲しがっている王族に与えれば、フェルディナンド様の連座が避けられるんじゃない?

「ツェントになる気はないけれどグルトリスハイトを得られるかもしれない!」と地下書庫でさらに調べると、中央棟を中心にした円周上に六つの祠が点在するらしいことがわかった。

一応王族に伝えたところ、調べて戻ってきたエグランティーヌの顔色が悪い。

ローゼマインに二人だけで相談したいことがあるという。


なんとエグランティーヌも祠に引き込まれたらしい。

二人だけのお茶会で祠に入る条件について問われるローゼマイン。

大神の加護を全て得てから手にした全属性シュタープが必要であることを伝える。

つまり生来の全属性であるエグランティーヌなら、頑張ってお祈りして魔力を捧げればグルトリスハイトを得られる可能性があるのだ。

自分の方が早く得られるだろうけど、取り込むためにジギスヴァルト王子の第三夫人にされても困るので、そんなことは伝えない。

しかしエグランティーヌを始め王族は強欲だった。

翌日アナスタージウスとエグランティーヌに、王族だけに都合のいい理由を述べられて、祠巡りを強制されてしまう……



書き下ろしSSなど


()内は大まかな内容。

特典SSとは、TOブックスオンラインストアや本好き応援書店で紙書籍を購入すると付いてくる書き下ろし短編です。

「Web版」と書かれていないものは書籍化にあたっての書き下ろしです。

  • プロローグ:ボニファティウス視点
    (かわいいローゼマインに醜聞は不要だ)
  • エピローグ:ヒルデブラント視点 (Web版第557話「閑話 望みと出口」)
    (私は今すぐにシュタープが欲しいのです)
  • 短編1:「望まぬ結婚」
    アドルフィーネ視点(別れの女神ユーゲライゼに祈りを捧げます)
  • 短編2:「シュラートラウムの花」
    オルタンシア視点(ラオブルート様と中央神殿の神官長が?)
  • 特典SS:「問題だらけの領主会議」
    フェルディナンド視点(ゲオルギーネはなんと他人を動かすことが巧みなのか)
    ※このSSから短編集未収録です。短編集Ⅲが楽しみですね!


目次へ


感想(ネタバレあり)


表紙の表情が意味深。ジギスヴァルト王子が背後で大きな顔(文字通り)をしている。

口絵は地下書庫で翻訳をする様子。こちらも色がキレイ。

ローゼマインだけでなく、マグダレーナ様のドレスもすごく豪華。王族ですもんね。

ハンネローレ様はダンケルフェルガーらしくシンプルだけど、もしも王族に嫁げば、彼女のように華やかな衣装を着るようになるかな?


どうやらヴィルフリートが大変荒れているご様子。

周囲の目も気にせず、ボニファティウスへの文句やローゼマインの悪口を言いまくって執務をしないらしい。

思春期ゆえとはいえ、このままでは次期領主教育は続けられないとボニファティウスに匙を投げられてしまいます。

でもジルヴェスターも困りますよね。ローゼマインを領主にするわけにはいかないし。

ローゼマインが目立つとはいえ、ヴィルフリートが地味でもきちんと努力を続ければいつかは認められるだろうに。

ジルヴェスターも子供の頃、姉に厳しく叱られてこんな風に反抗したんでしょうか。

自分の感情優先で周囲の者の考えや感情まで意識が向かないのは、父親譲りなんですよね。

幸いジルヴェスターには厳しい側近がいてくれたので軌道修正できた。

ヴィルフリートは言いなりになれば側近が褒めてくれるという、変な成功体験ができちゃったのかな……


自分を避けている上反抗期真っ盛りのヴィルフリートを、婚約者として大切にしろと言われたローゼマイン。

婚約者らしい扱いを受けたこともないのにいったいどうすれば……恋愛未経験だし側近も助言くれないし。

フェルディナンドにしたようにオルドナンツを送って鬱陶しがられます。まあ、予想通りというかポンコツな。

それにしても、ヴィルフリートはなぜ婚約者らしい行動を取らないんでしょうね。

嫁取りディッターの時はそれらしい言動をしていたのに。

バルトルトに操られる側近達はローゼマインを非難こそすれ、ヴィルフリートの行動を咎めず有効な助言もせず。このままじゃ外聞が悪くない?


神殿に「青色見習い」誕生。新鮮ですね。

青色神官とはいえ、貴族として洗礼を受けた彼等は今後貴族として生きていくことができます。

ローゼマインはなんとか孤児院の子供達にも貴族への道が開けないか考えますが、すげなく却下され……

でも転んでもタダでは起きないですから。あの神官長に立ち向かって意見を通していた実績があります(ふんす!)。


領主会議ではフェルディナンドに会えず残念。この辺りの事情が特典SSにあります。

フェルディナンド視点なので、とてつもなく不穏。

ディートリンデはなんとか転がせるけど、ゲオルギーネにはどうしても敵わない。

すべてを読まれて、周囲同様思い通りに転がされている気がしてなりません。

恐ろしいですね、ゲオルギーネ。他人を操るのがものすごく上手い。

まあ常識通りに動かないローゼマインと、能力も努力も足りないディートリンデはそうでもないんですけど。

それに今回読み直して思いましたが、フェルディナンド様、社交で人を動かすの下手ですよね。陰謀は大好きで大得意なのに。

レオンツィオの半分でもディートリンデをうまく扱っていたら、違った物語になっていたでしょうね😅


さて、フェルディナンドとの交流を禁じられたローゼマインは、地下書庫での作業が癒し。

ヒルデブラントも書庫に入れるようになったので、一緒に作業をします。母親のマグダレーナも一緒。

幼い王子は「魔力を増やして役に立ちたい」と願い出て、王族とダンケルフェルガーの魔力圧縮方法を学んだらしい。

地下書庫に入れて大喜びのヒルデブラント王子と、褒めるマグダレーナ。

うーん、ここまで喜ばせておいてシュタープを先延ばしにすれば、そりゃ不満が溜まるかも。

彼の今後が心配ですが、何かあったとしたら「魔力を増やしたい」という言葉の裏にある恋心と婚約への不満を察することができなかった、母親と側近達の落ち度ですよね……

ラオブルートはヒルデブラントの感情を利用して「ツェントになれば婚約解消できる」と誘導していましたね。

第五部Ⅰのaudibleオーディオブックを聞いていてつくづく思いました。(4/26に配信になりました!)

※今なら2か月無料で体験できます! この機会にぜひどうぞ!

2024年5月9日までAudible会員プラン2か月無料体験キャンペーン開催中!


せっせと作業をしているとディートリンデ現る! 作業どころではなくなります。

特典SSによると、フェルディナンドがなんとか防ごうとしたにもかかわらず、会議をサボって地下書庫へ下りることにしちゃったらしいんですよね。

そういえばローゼマインもそうでした。フェルディナンドは王族が頑張って古語を勉強して書庫の石板を読むと思って情報を流したのに、彼等はローゼマインにやらせることにした、という……

だから、なんとか遠ざけておこうとした彼女が地下書庫に入るのを止められなかった。


でもディートリンデの自分本位な行動って、フェルディナンドには直接危機をもたらすけれど、ローゼマインにはまわりまわって利益をもたらすことが多いんですよ。

フラウレルムに圧力をかけてくれたり、余分に録音機を作ることになったり。

今回は、祠に吸い込まれてメスティオノーラの書取得のキーワードを得ることになりました。


王族に祠の位置を知らせたところ、中に入ることのできたエグランティーヌが祠巡りをしてみたらしい。

でも結局彼女は自分がグルトリスハイトを得ることを拒否し、アナスタージウスとともにローゼマインに祠巡りを強要します。

フェルディナンド連座という弱みを盾に、ローゼマインを自分達に都合よく動かそうとするなんて最低!

ここに来て、ローゼマインのエグランティーヌに対する好意と信頼が崩壊し霧散します。

エグランティーヌは自分自身の望みである「平穏」を叶えるためであれば、他者の犠牲を意に介さない。

誰が犠牲を払おうとも、平穏なツェント継承こそがユルゲンシュミットの平和だと信じています。

そのために自分達王族が犠牲を払わず、エーレンフェストの者達に払わせることになるのはどうでも良いのです。

アナスタージウスは妻の望みを叶えることが最優先。

「エーレンフェストのことはエーレンフェストで解決しろ」と。( ゚Д゚)ハァ?

ここの場面、挿絵がすごくいいですよね!


深く傷つき怒りをこらえて地下書庫へ行けば、ヴァイスに奥へ連行され、シュバルツに「ひめさま、しゃほんする」と言われます。

この奥にメスティオノーラの書が?と胸が高鳴りますが、魔法陣に弾かれてしまう。

王族登録がなくてはグルトリスハイトが得られない。

王族はそれを知ると、ローゼマインを養女にしてグルトリスハイトを得てもらい、陰のツェントとするために後々はジギスヴァルト王子の第三夫人にすることを考えます。

なんだかんだでローゼマインは中央へ行くことを了承し、いろいろ条件をつけることにしました。

これまで上位に粛々と従ってきたジルヴェスターも、初めて文官に頼らず自分たちで条件をひねり出します。

「商人聖女」。いいコトバだ…


王族登録がないということでグルトリスハイトは得られず、シュミルズに攻撃されてしまいました。

でも疑問が次々と浮かびますよね。

空に浮かぶ魔法陣はいったい何? どうすれば起動するの?

以前ダンケルフェルガーからもツェントが立ったというのはどういうこと?

古い記述だったので、どのように王になったのか詳しいことは書かれていなかった。けれど、王族登録されていなければグルトリスハイトを手に入れられないのであれば、ダンケルフェルガーから王が立つはずがない。他に何か方法があるのだろうか。それとも、他領から王が立つのを防ぎたかった誰かが後世になってから選別の魔法陣を作り出したのだろうか。


うーん、謎ですね。

目次へ


資料 ディートリンデ来襲! 地下書庫の危機!


この巻では、図書館にディートリンデが来襲。

その時にローゼマインたちがたどった経路を、ふぁんぶっくと書籍の描写から推定して図解してみました。

あくまで推定、というか想像の域を出ないのでご承知おきください。

「別に詳しく知らなくても…」という方は飛ばして大丈夫です。重箱の隅ですから。

(3本の鍵で開く扉については、第五部Ⅰ~Ⅲの資料をご覧ください)

本好きの下剋上第五部Ⅰ~Ⅲのあらすじと感想です(貴族院新側近・地下書庫のオリジナル資料あり) - コージーなロマンス、コージーなミステリ


  • 図書館1階見取図 

まず、図書館の1階は ふぁんぶっく3 によるとこんな感じになっています。

(本棚の位置は私の推測です)



第二閉架書庫から司書寮の庭に出る階段がわかりますよね。

これが今回、外へ出るのに使った階段だと思います。


地下書庫と第二閉架書庫の関係


地下書庫に行くには、まず第二閉架書庫に入らなくてはなりません。

ディートリンデもまず図書館登録をして、第二閉架書庫へ誘導されていました。

奥にある階段室(と思われる場所)から階段を下りると真っ白な広間があって、一面だけ金属色をした壁があります。そこが地下書庫への入口。

※階段の位置や部屋同士の関係は見やすさ重視にしています。

※建築的に考えて地下書庫が閲覧室の真下の地下にあるとすると、階段はカーブまたは折れ曲がっていると思われ、その場合の階段の位置はこの図で言うと左側になるかと。



3人の鍵の管理者がそれぞれ鍵を壁の魔法陣にはめると、壁が消失。地下書庫に入って作業ができるようになります。


地下書庫に入れるのは、 ① シュバルツとヴァイス ② 王族 ③ 礎の魔術に魔力供給登録のある領主候補生で、④ 基準魔力量を上回る者

ヒルデブラントは②の資格を持ちますが、④がクリアできていなかったので、前回は中に入れないという屈辱を味わいました。

そのため、まだ貴族院入学前であるにもかかわらず、魔力圧縮を教わって魔力を増やしたようです。


第二閉架書庫へ上がり本棚の陰に隠れる


地下書庫には出入り口が一つしかないため、ディートリンデを避けるには、彼女が第二閉架書庫に入ってくる前に地下書庫から出て階段を上がり、そのまま第二閉架書庫に隠れるしかない。

隠れた場所はこんな感じでしょうか?(あくまで想像です)



ディートリンデが地下書庫へ去った後、ソランジュ先生は階段室に鍵をかけ、ローゼマイン達を司書寮の庭へ出してくれました。

そしてローゼマイン達がのんびり散歩していると、祠が見つかったのです。

ヴァッシェン! 神に祈りを!

目次へ



第五部 女神の化身Ⅵ(6)(通算第27巻)



オーディオブックは2025/11/14配信予定。Audibleでどうぞ。


[27巻]本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身6」香月 美夜 (著), 井口 裕香 (ナレーション), Audible Studios (出版社)


側近達とお母様が尊い…

ジギスヴァルト王子の第三夫人になる覚悟を決めたローゼマインの表情は穏やかですね。

タイトルロゴに隠れているのはハルトムート・クラリッサ・コルネリウス・レオノーレです。

旧ヴェローニカ派側近ズとユーディットはいませんね…今気づいた。



あらすじ


プロローグはフロレンツィア視点。ローゼマインの中央行きが決定したあとの領主夫妻の会話から始まる。

王族から極秘事項として王宮の魔術具が崩壊したことを知らされて、グルトリスハイトの重みを感じたふたり。

ローゼマインが引き抜かれることを仕方ないと納得している。

心配なのはヴィルフリートの将来だ。側近の暗躍にも、自分の立場の危うさにも気づいていないようだ。

何か教材が必要、と考えるフロレンツィアだが…


領主会議の秘密の報告会で、ローゼマインが中央へ行くことを知らされた領主一族。

ボニファティウスは激怒する。なんとか収まったものの、そこで知ったシャルロッテの思い。

彼女は領主になることを望んでいたのだ。

ローゼマインはそれを察せずに無神経な言動をしていた。義妹がどれほど我慢していたのかも知らずに。

自分基準で、シャルロッテも領主に興味がないと勝手に判断していたわたしは、お姉様失格だ。


喜ぶシャルロッテと引継ぎに真剣になるメルヒオールが退室すると、ヴィルフリートが爆発する。

彼はローゼマインとの婚約を解消したくて、父親と何度も衝突していたらしい。

どうやらライゼガングにけなされたことが堪えたようだ。

増長して自分を攻撃するライゼガングを抑えるのはローゼマインの役目ではないか、と彼女を非難する。

さらにフェルディナンドにばかり気を遣うローゼマインを責め、ヴェローニカを慕うことを批判されたことにも憤る。

かなり理不尽なことを言っているのだが、おそらく旧ヴェローニカ派色に染まっている側近達にそう吹き込まれたか、甘言に惑わされているのだろう。

筋が通っていないことに全く気付いていないし、たしなめる父親の言葉を聞こうともしない。

それでも言い返すことなく大人の対応をしたローゼマイン、偉かったね。( *´・ᴗ・)/(._.`)ヨシヨシ

ひとまず、ヴィルフリートとは今後兄妹としてつきあって行くことで合意した。スッキリした表情のヴィルフリート。解せぬ。


さて、今度は自分のことを考えなくてはならない。まず側近達に話をしよう。

エルヴィーラの采配でリーゼレータに告白💗することになったり、なぜかハルトムートとクラリッサの名を受けることになったりしたが、無事収まったと思う。

そしてリンクベルクの実家でエルヴィーラとゆっくり話をして、貴族の母の思いを知り、励ましをもらったローゼマイン。

フェルディナンドへの心配に初めて共感してもらえたことから、自分が意固地になっていたことを打ち明ける。

心配してもいいんだ。連座を回避したことを誇ってもいいんだ。

気が軽くなって寝坊してしまったが、城へ戻り領主一族の会議に参加する。


多数の子供用魔術具が中央から送られてきた。どうやらローゼマインを確保しておきたいらしい。

それを見た彼女はジルヴェスターに、条件付きだが孤児院にも魔術具をまわす約束を取り付ける。

早速神殿へ行って側仕えに移動のことを話し、その後孤児院の子供達の魔力判定をする。

ハルトムートに任せた結果、ディルクが貴族になれることになった。

なんと彼は貴族として神殿長や神官長になり、孤児院を守りたいらしい。

そしてコンラートはフリタークのように自分で稼げる商人青色神官になりたいという。彼らの成長に驚くローゼマイン。


ベンノやルッツにも移動について話さなくてはならない。

と考えていたら、ハルトムートから爆弾発言が。彼はローゼマインの出自を知っていた

勿体ないから他言はしないというし名も受けたから大丈夫だろうが、話す前からどっと疲れたよ…


ジルヴェスターが不在の城。

兄妹弟で和やかにお茶会をしていたら、突然押し寄せてきたライゼガングの古老たちにフロレンツィアが一人で対応する状況になっている、とハルトムートから知らせがあった。

急いで救援に行く子供達。

そこでライゼガングをうまく牽制し収めることができたが、ヴィルフリートの無神経な発言が気になった。

あれ? ヴィルフリート兄様と側近の関係が変わっている。

古参の護衛騎士ランプレヒトが遠ざけられ、名を受けたとはいえ新入りのバルトルトを近くに置いているようだ。

後で知ったことだが、どうやらこの事件はフロレンツィアと彼女の筆頭文官レーベレヒトによる、ライゼガングの力のそぎ落としとバルトルトの牽制を目的とした企てだったようだ。

ひとまずライゼガングの勢いはそがれたし、今後ヴィルフリートをバルトルトの暗躍に自ら気付くよう教育するのだそうだ。

領主の第一夫人ともなれば、大きなお腹をしていてもそれくらいの計画ができなくてはならないのだろうか。


ジルヴェスターがアウブ・アーレンスバッハの葬儀から戻ってきた。

葬儀にはランツェナーヴェの者達も招かれ、中央騎士団の一部が暴れたそうだ。

どうもよくわからないことが起こっているらしい。

約束通り隠し部屋が与えられていてホッとした反面、フェルディナンドが心配でならないローゼマインだが……



書き下ろしSSなど


()内は大まかな内容。

特典SSとは、TOブックスオンラインストアや本好き応援書店で紙書籍を購入すると付いてくる書き下ろし短編です。

「Web版」と書かれていないものは書籍化にあたっての書き下ろしです。


  • プロローグ:フロレンツィア視点
    (考えなければならないことが目白押しですね)
  • エピローグ:ルッツ視点
    (あいつの計画は大体予定より早まるんだよな)
  • 短編1:「ランツェナーヴェの使者」 Web版第568・569話
    ディートリンデ視点(わたくしの肩にユルゲンシュミットの未来がかかっているなんて)
  • 短編2:「わたくしの希望と問題点」
    リーゼレータ視点(わたくしはお側でお仕えしたいのですが…)
  • 短編3:「騒動の事情聴取」
    ジルヴェスター視点(姉上と決着をつけることになる日はそれほど遠くない)

 ※この短編に入れられなかったネタが「本好きの下剋上 SS置き場」にあります。   
  ジルヴェスター視点「葬儀前の挨拶」

  • 特典SS: 「踏み込み過ぎた代償」
    ハルトムート視点(私は灰色神官達を見くびっていた)


目次へ


感想(ネタバレあり)


この巻は、中央へ移動する覚悟を決めたローゼマインが準備をする内容となっています。

プロローグはフロレンツィア視点。

どうやら王族は領主夫妻にローゼマイン引き抜きを納得させるため、極秘ということで王宮の魔術具崩壊のお涙頂戴をやった模様。

でもでも、王宮の魔術具なんて崩壊したってかまわないんだよ!

…って言いたいけど、まだ言えない。

言えるのは、グルトリスハイトがないままユルゲンシュミットを治めるのは絶望的なことだということ。

トラオクヴァールはそれを身につまされているけど、ジギスヴァルトはよくわかっていないということかな。

彼はツェントという地位に固執しているだけで、グルトリスハイトがツェント業務に必須だと実感していないのです。

あれば箔がつくし中央神殿を黙らせることができると思っているくらい。

ジギスヴァルトはグルトリスハイトを持つ王の治世を知らないから…知らないって恐ろしいことですね😱。


そしてヴィルフリートがますますヤバい。

側近に踊らされて婚約者を攻撃している。

婚約解消で関係が修復されてからも、ライゼガングに対してポカをやってるし。

彼はヴェローニカがライゼガングに対して行った非道を知らないし、知ろうともしないから……

ヴィルフリートの情報源はほとんどヴェローニカに名捧げしているオズヴァルト。

忠実な側仕えを疑うなんてことは思ってもみない。

オズヴァルトの辞任も、粛清に伴う連座のようなものだと思うように操作されたため、オズヴァルト自身に問題があったとは考えていない。

ヴィルフリート、好きなんだけどなあ。なんだかお先真っ暗という感じじゃないですか?

次期領主じゃなくなって、彼はどうするのでしょうか。次期領主の補佐になれるほど有能だといいのですが。


この巻のローゼマインの覚悟について、Webで読んだときにはまさかと思ったのですが、こういうことなんですよね。

王の養女になって王族入りする。

地下書庫の奥へ行ってグルトリスハイトを手に入れる。

好きでもないジギスヴァルト王子の第三夫人になる。

離宮に閉じ込められて陰のツェントになることを承諾する。


すごい自己犠牲なのですが、それはひとえにフェルディナンドを連座にさせないため

そして、フェルディナンドをエーレンフェストに帰すためなのです。

まだ彼はローゼマインが彼のため、そしてエーレンフェストとユルゲンシュミットのために犠牲になることを知らない。

そのことを知っても、今までのように「エーレンフェストが私のゲドゥルリーヒ」と言いながら全てを受け入れるのでしょうか。



最近のイベント(2024年4月以降)


SHIBUYA TSUTAYAがリニューアルオープンして、素敵な本好きの下剋上のPOP UP SHOPがスタートしました!

1年くらい続くみたいなので、ゆっくり行ってみたいと思っています。

詳細はこちら。

shibuyatsutaya.tsite.jp

その他の最新情報はこちらからどうぞ!

「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜」特設サイト




(広告)