今回は、まとめて3冊レビューしてしまいますね。何度も読み直すのがちょっと辛いので。
恐い、という作品もあるのですが、悲しい、というのが大きいかな。
子供がひどい目に遭うのはやっぱりやりきれないですよね。
<読み進む前に>
- 一部ネタバレあり。
- あらすじは筆者が作成したものです。
- 感想・おススメ度はあくまで筆者の個人的な印象に基づいています。
変な家
まずはコミカライズもされているこちらの作品から。
おススメ度
評価 :★★★★(悲しい作品なのですごくお勧めするわけでもないですが…)
ミステリ度:★★★(手がかりが全部提示されているタイプのものではないです)
ホラー度:★★★★(読んでいる間は怖いけど謎が解けると…)
あらすじ
1階に不明な空間を持つ家の間取り図について相談されて、知り合いの設計士に相談するフリーライターの主人公。
確かに1階の台所と居間の間に用途不明で開口部のない空間がある。
しかし設計士は、不思議なのはそれだけではないという。2階の間取りがもっといびつなのだ。
子供部屋が間取り図の中央部にあって、その部屋に入るには廊下から2枚のドアを通らなくてはならない。
しかも窓がないし、専用のトイレもある。
まるでその部屋から出なくていいように閉じ込めているかに見える。
ぞっとした主人公が1階の間取り図と2階の間取り図を重ねてみると、さらに不気味なストーリーが浮かんできた…
感想(ネタバレあり)
コミカライズ版を読んでとても気になったので読んでみました。間取り図見るの好きなんですよね…
元々はYouTubeで配信されていたものなんですね。間取り図が出てくるのは、動画の方がわかりやすいですよね。
間取り図から不自然な家の造りを読み取り、それが意味するものを推測していくストーリー。
謎解きと不気味さがメインなので、人間ドラマやキャラクターの作り込みはあまりないです。
そのため、キャラに愛着が持ちにくい作品になっていますが特に問題ないです。最後までノンストップで読めます。
間取り図は全部で3軒分。最初は東京都内の二階建ての間取り図です。
1階には謎の空間、2階には明らかに不自然な部屋がある間取りです。
もしかして、子供部屋には子供が閉じ込められていて、ある目的に利用されていたのでは?
この憶測ストーリーが説明される間取り図はわかりやすい。
断面図や、平面図を重ねたときの図もていねいに表示されています。
でもそれから導き出される結論(仮)がエグいんですけどね…
主人公(というか語り手)に相談してきた知人は結局この家をあきらめた。なんと近所でバラバラ死体が発見されたという。
憶測が推測になるのか? もっと手がかりが欲しくて仕方ない主人公。この家のことを記事にしてしまった。
ここから第二幕。記事に反応して女性から連絡が入ります。
そして今度は「埼玉の家」があったことが明らかに。
こちらも同様に「窓が無くて専用トイレのある部屋」があるようです。
でもこの埼玉の家、間取り図はいいんですが、子供部屋から浴室へのルート図が不親切に思えました。(あくまで個人的見解です)
上の間取り図は平面図で、ちゃんと1F・2Fと書かれている。
一番下のルート図もてっきり平面図だと思って見ていたら、どうもおかしい。
これだと子供部屋の位置が…と思ったら、たぶん断面図ですよねこれ。
東京の家のときは、このルート図にも1F・2Fの表示があったのに、なくなってる。
まあ、断面図だと思って見てもわかりにくいですけどね…
ここでちょっとひっかかって恐怖感が薄れてしまったんですが、無くなってはいないところで第三幕。
第三幕は、田舎の家の間取り図。記憶からの描き起こし。
部屋に数字がついているのでありがたい。
取りあえず、仏壇を中心にしている点ですでに怖い。なんなのこの家。
しかも廊下の突き当りに仏壇って、とっても失礼な気がするんですけどね、仏さまに。
もちろんこれには理由がありました。非常に重苦しい理由が…
「変な家」、話の進め方、ゾッとする感じが小野不由美さんの「残穢」にちょっと似ています。
ルーツを辿っていくところも。残穢はここがすごく怖いですよね。
「変な家」は純粋なホラーではなく謎解きなので、最後は真相がわかるところ、解決する?ところはまあスッキリしますけど、やっぱり怖いし悲しいので、そういうものが苦手な方にはおすすめしません。
それに子供がひどい目に遭うので、苦手な方は避けた方がいいです。
コミカライズ版「変な家」は怖い!
間取り図が鍵なので、コミカライズ版はわかりやすいですね。
私のように動画が苦手な人間もとっつきやすい。立体化して図示してくれますし。
2024/3現在、3巻まで発売されています。
でも怖い。本より怖い。絵になると怖い。
ミステリというよりホラーになってます。ちょっと脚色してあるし。
かなり怖いのでホラー苦手な方は気をつけてください。
変な家 1
書籍版の第一章~第二章途中まで。このくらいならまだミステリっぽい。
変な家 2
第二章の途中~終わりくらいまで。この巻からかなり怖い。
変な家 3
第二章の終わり~第三章の途中まで。どんどん陰惨になってゆく…
内容はそれほど混み入っていないので、サクサク進んで最終巻まで行くんじゃないかと期待しています。
でも怖い。続き買うのどうしようか迷う。
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変な家2~11の間取り図~
いつの間にか2が発売されていた!
前回のような怖さがあるのか? 夜一人で読んでも大丈夫?
こちらは11の間取り図を通して、謎を解いていく物語です。
前作よりミステリ色が強いです。ページ数も多い。
おススメ度
評価 :★★★★(かなり残酷で悲しい作品なのですごくお勧めするわけでもない)
ミステリ度:★★★★(かなり練られています)
ホラー度:★★★(途中で怖くなくなる)
あらすじ
- ①行先のない廊下
女性の育った家には南側に向かって行先のない廊下があって、両親の寝室と女性の部屋を隔てていた。
ハウスメーカーによると、建築途中で計画が変更になっただけでなく、後日減築の話もあったという。
- ②闇をはぐくむ家
中部地方の悪徳ハウスメーカーが建てた家は、部屋だけが詰め込まれ廊下もドアもない、とても居心地の悪い間取りだった。
そこで残虐な家族間の殺人事件が起きる。間取りは関係あるのか。
- ③林の中の水車小屋
林の中に佇む水車小屋。周囲に水はなく、水車は小屋の中の間取りを変更するために存在していた…
- ④ネズミ捕りの家
孫と祖母のために建てられたというお屋敷であった転落事故。
脚の悪い祖母がいたにもかかわらず、まったく弱者に優しくない間取りになっていた。
- ⑤そこにあった事故物件
林の入口に建てられた1階に窓のない家は、事故物件だった。
- ⑥再生の館
①~⑤と全く無関係に見える話。宗教施設に潜入した記事を読んで、施設の形の謎を考える。
- ⑦おじさんの家
虐待されていた少年の日記。
- ⑧部屋をつなぐ糸電話
寂しがり屋だった子供の頃、寝ながら父親と糸電話をしていた女性。
両親が離婚後その糸電話を発見したが、糸の長さから見ると到底家の中で使われたはずはなくて…?
- ⑨殺人現場へ向かう足音
⑧の家の隣家の話。間取りが全く同じだが、火事で焼失してしまった。
- ⑩逃げられないアパート
置棟で売春を強いられていた女性の話だが、どうにも腑に落ちかねる点が…
- ⑪一度だけ現れた部屋
以前見たあの隠し部屋はどこにある?
11の間取り図を見ながら、共通点を探していくうち、とても怖くて醜いものが見えてきて…
※子供がひどい目に遭うので、辛い方にはお勧めしません。
感想(ネタバレあり)
作品の構成という点では、「変な家」よりも凝っていると思います。
手がかりが多く、ミステリ度が強い。「解決編」も長い。
その分、ホラー度は下がって、ミステリに集中できます。
一見何の関係もなさそうな11の間取りですが、どの間取りも何か関連がある。
途中から、あ、この名前以前も出てきたな…くらいの手がかりはあるんですけど、どのようにつながっているのか見当がつくのはかなり後半になってからでしょうか。
残念なのは、構成はいいんですけれど、緻密じゃないこと。
ミスプリントがあったりして「はて?」としばらく迷わされました。
すごーく肝心な部分なので、右と左を間違えるのやめて!
それにストーリーにほぼ無関係な間取りもあるし、「いやその仕掛け、ひとりじゃ動かせないよね?」といった矛盾もあったりして、
解決編を読んでいるうちに突っ込み過ぎてちょっと醒めてしまった。
そして真相がキツい。
子供がひどい目に遭うと悲劇的になってホラー度が上がるとか考えるのやめてほしい。
変な絵
いくつかの絵を見て、そこに秘められたメッセージを解き明かします。
やっぱりミステリ形式でもあるのですが、サイコパスが出てくるので、サスペンス感が強い。
※出産の絵があるので、苦手な方にはお勧めしません。
※子供に残酷な場面はあまりありません。
おススメ度
評価 :★★★★(かなり残酷で悲しい作品なのですごくお勧めするわけでもない)
ミステリ度:★★★(それほどでもない。どちらかというとサスペンス)
ホラー度:★★★★(最初の絵が引きずる)
あらすじ
また栗原という男性が出てきますが、彼は大学のサークルの後輩で、「変な家」シリーズの設計士とは無関係です。たぶん。
①風に立つ女の絵
あるブログが気になるメッセージを残して更新をやめた。残された5枚の絵が何かを伝えているらしいのだが…
②部屋を覆う、もやの絵
保育園に通う今野優太を育てるママ、今野直美の話。頑張って優太を育ててきたが、最近誰かにつけられているような気がする。
いっぽう保育士春岡は、優太くんの描いた絵に何か意味があるような気がしてならなかった。
そんなある日、優太が失踪する。
③美術教師 最期の絵
三浦義春は美術教師だった。熱血タイプで善意に溢れていたが、やや独善的で周囲に煙たがられていた。
しかし彼はある絵を残して突然殺されてしまった。
数年後、迷宮入りしていたその事件を調査しようとする人間がいた。
感想(ネタバレあり)
「変な家2」より「変な家」に近い作品。
間取り図ではなく絵で真相に迫ります。
そしてサイコパスのシリアルキラーが出てくるところが、「変な家」とはだいぶ違いますね。
絵の枚数はさほど多くありませんが、最初に出てくる絵のインパクトが強くてずっと胸の中にモヤモヤと残るのが辛い。
さて、ストーリーの構成は比較的単純です。
第一章で、出産と死の謎がふんわりと提起され、
第二章で、亡くなった女性に関わりのあると思われる人物が登場し(章の最後で明確になる)
第三章では、無関係かと思われる人物の殺人事件が提示される。
若い教え子がこの殺人事件の真相を追ううちにまた殺人事件が起きて、すべての謎が解けるしくみ。
事件を解くのは第三章になってからの登場人物となっていますが、第一章の登場人物も忘れないで。
途中、ずっとやりきれない思いが続きますが、最後は少しだけ希望が持てますのでご安心を。
純粋に小説としてみると、第一章~第三章に至る時系列がやや不明瞭なのと、同じ章の中でも時が飛んでわかりにくい。
アリバイ崩しのために1日の時系列は何度も提示されるのですが、年数については「わたしは今どこに?」となります。
そのあいまいさで恐怖を煽っているのかもしれないけど、ちょっと中途半端に感じます。
なにかひっかかることがあると、恐怖心が冷めちゃうよ。
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基本情報
自分の情報整理のための覚書ですが、お役に立てば幸いです。
変な家
出版社:飛鳥新社
初版年:2021年
(覚書)
購入形態:電子書籍
購入サイト:Amazon.co.jp
コミカライズ版購入サイト:コミックシーモア
変な家2~11の間取り図~
出版社:飛鳥新社
初版年:2023年
(覚書)
購入形態:電子書籍
購入サイト:Amazon.co.jp
変な絵
出版社:双葉社
初版年:2022年
(覚書)
購入形態:電子書籍
購入サイト:BOOK☆WALKER
映画について
2024年春公開予定!公式サイトはこちら。
登場人物を見ると、原作よりだいぶふくらませた話になりそう。
あまりオカルトっぽくならないといいなあ。